庭に巨大な穴を掘った男、近所から羨望の眼差しで見られることに
アメリカンドリームを思い描く人も、この世の中には多いのではないだろうか。大きな家に、子ども達や犬が走り回れる大きな庭、そして、近所の人から羨ましがられるような外観など。
ウェイン・マーティンには、大きな家と庭があった。しかし、彼はこの自分の家をさらに他の人と違うものにしたいと思い、大規模なプロジェクトに取りかかることにした。そう、突然、庭に大きな穴を掘り始めたのだ。近所中の人々は、ウェインがおかしくなってしまったのではないかと思ったが、じきに裏庭を使ったウェインの計画に気づく。ウェインが巨大な穴を掘ったことはバカげたことのように思えるが、これは今までに見たことがないような大きな野望が隠された計画だった。
この巨大な穴で何をするのだろうか
こんなにも巨大な穴を、もし近所の人が掘り始めたら、おそらくプールでも作ろうとしているのではないかと考えるのではないだろうか。正直、これがたとえ巨大なプールだったとしても、近所の人は羨ましがるだろうと思う。
しかしながら、ウェインはこの穴に水ではないものを入れようとしていた。下に砂利を敷き詰めると、絶対にプールではありえないものを用意したのだ。近所の人達は、ウェインが6mもの輸送用コンテナを庭に運び込んだのを見ると、すぐにウェインが作ろうとしているものはプールではないことに気が付いた。
6mの巨大コンテナを購入
ウェインは穴を掘り始める前にまず、6mものコンテナを購入した。インターネットでは写真のような巨大コンテナが、かなり手頃な価格で買えるというのだから驚きだ。
DIY(日曜大工)が好きな人ならお分かりのように、DIYで最も重要なことの1つはコストを抑えるということだ。実際には必要のないものに散財したり、いくら使ったか分からなくなったりということはよくあることだ。ウェインの場合、こんな巨大コンテナを安価で買えた結果として、プロジェクトを達成できたとも言える。しかし、このコンテナを一体何に使うのだろうか。まもなく、その謎が解ける。
シーリングはきっちりと
コンテナを購入してからはじめに行ったことは、シーリング(断熱の為に充鎮材で塞ぐこと)を施すことだった。巨大な両開き扉は使わないため、シーリングで片方の扉を密閉し、反対側に片開き扉を設置した。
水さえもそこから漏れることのないようにぴったりと閉じた。また、反対側に取り付けた片開き扉は、外側ではなく、内側に開くように設置した。これでコンテナへの出入口は1つとなった。こんなに密閉した空間を作ってどうするのだろう。
測定は二回、掘るのは一回
ここでウェインがおかすかもしれなかった過ちとして挙げられるのは、コンテナよりも掘った穴が小さかったりすることだ。そこで、ウェインは念のためにコンテナの高さよりも2フィート分深く穴を掘った。
また、ウェインはコンテナを置いたときにコンテナ周りに余裕があるように、およそ2フィート分のスペースを確保した。さらに片開き扉がある側には余分にスペースを見積もって穴を掘った。これは最初に余分をみておくことで、後々に困ったことにならないためだった。
底には丸砂利を敷き詰めた
ウェインはさらに、底に玉砂利を敷き詰めた。これはコンテナを置いたときの衝撃を和らげるだけでなく、その下の土を水が通るときにろ過としての役割を果たすためだった。
この時点で、コンテナとこの穴を使って何を計画しているのか気づいた人もいるかもしれない。だが、プロジェクトの目的は何だろうか。コンテナの上の部分にも少しスペースを確保したのには理由があったのだ。
時にはプロの力も必要
このプロジェクトはDIYプロジェクトではあったものの、時にはプロの力も必要だ。みんながみんな、20フィートのコンテナを持ちあげて、庭の巨大な穴にそれを下ろすクレーンを持っているわけでもないだろう。そこでウェインは浄化槽の管理会社に連絡し、こうした作業を依頼した。
実際、これは友人らを集めてどうやってコンテナを埋めるかについて知恵を絞るよりも、よっぽど実用的なアイデアだったと言える。さて、コンテナが穴に収まったが、ウェインの計画はどのようなものなのだろうか。これは予想以上に複雑な計画だった。
穴にぴったり
ウェインがコンテナよりも一回りも二回りも穴を大きく掘ったのには様々な理由がある。ウェインは両側にそれぞれ2フィートのすき間と、片開き扉がついた方には1フィートすき間ができるように掘ったのだ。
そして今、コンテナが穴に入った。ここからが本当のプロジェクトの始まりだ。もしかするとウェインの計画が何なのか分かった人もいるかもしれないが、最終的にウェインが完成させたものを見ると、あなたのDIY魂にも火がつくかもしれない。
地中に何かを埋めるときには排水ポンプが必要
密閉空間から排水を行うには、排水ポンプが役立つだろう。これは何かを地中に埋めるときには必ず重要となってくる。こうすることで、貯蔵庫を常に水位よりも上に保つことができる。一般的に地下室によく排水ポンプが付いているのは、このような理由からだ。
地下に設置する貯蔵庫で最も起こってほしくない事態は、浸水だ。中のものすべてをダメにしてしまう。だが、ウェインは実際には何を中に入れようとしているのだろうか。まもなくそれが明らかになる。
素晴らしい出来ばえの入り口
地下に貯蔵庫を設置しようとしている場合、たいてい、そこへ繋がる通路が必要となる。ウェインは貯蔵庫に続くコンクリートの階段を作り、階段の最上段が貯蔵庫の高さと同じになるようにした。
もしかしたら、多くの人はもっとシンプルな通路、たとえばハシゴや消防署にある滑り棒の方を好むのかもしれないが、こうしてウェインは地中に貯蔵庫を埋め、コンクリートの階段を完成させた。外側の主な作業を終え、次に内装の作業に移ろうとしていた。
2本の支持梁
ウェインが写真のように、2本のI形梁を設置し、貯蔵庫ができるだけ安定するようにしたのは賢明な判断だったと言える。20フィートもあるコンテナはちょっとやそっとでは動かないと思うかもしれない。だが、地面はちょっとしたことで動き、貯蔵庫のバランスが簡単に崩れてしまうこともあるのだ。
この2本の梁には他にも目的があった。貯蔵庫を支えるだけでなく、ウェインの作ろうとしている地下貯蔵庫の外装にフレームとして機能するためだ。ウェインは他に何を計画しているのだろうか。それは、まもなく明らかになる。
屋根も作るのだろうか?
地下に貯蔵庫を設置するときに、注意して屋根を固定しなければならないなどとは考えも及ばなかったが、ウェインは屋根を支えるため、貯蔵庫の上にさらに骨組みをした。これでなぜはじめにI形梁を組んでおいたのかお分かりだろう。
こうすることで、残りの作業がどんなものかが明らかになる。ウェインは貯蔵庫の周りも余裕をみて掘っていたため、この作業を完成させると、この貯蔵庫を埋めた部分は完全に庭の一部となるだろう。
地面下の屋根
屋根が地面の下にあるなどとはなかなか思いもよらないことではあるが、これこそ正に彼の計画したことだった。ウェインは重いシートメタルを枠組みに敷設していった。これで人や犬でさえも上に乗れるほどの強度ができた。
明らかに、これは屋根工事の最初の取りかかりのようだったが、これは計画がどのようなものかを示すヒントとなったことだろう。外装がほぼ最終形態となってきたため、貯蔵庫の内装がどのようになるのか見ていこう。結局のところ、貯蔵庫の中には何を入れるつもりなのだろうか。
ただの階段ではない
すでに述べたように、貯蔵庫の唯一の出入口は階段だ。だが、ウェインは一般的な入り口では満足できないようだった。屋根工事がすべて終わり、屋根がしっかりと取り付けられた後、ウェインは貯蔵庫への通路となる階段の仕上げに取りかかる。
ウェインは屋根の高さから穴を開けたまま、鉄筋を組み、まずはしっかりと支えがあるようにした。この作業はプロジェクト全体から考えると、必要ないのではないかと思われるかもしれない。通路となる階段をシンプルなものにすれば、これら一切の工事は必要ないのではなかろうか。なぜわざわざここまでするのだろう。それは、やるからには思い切りやろうとウェインがしているからだ。
コンクリートブロックを積み上げる
明らかに、これを貯蔵室に積んでいるのを見ると、ウェインは安全をかなり重視しているようだ。貯蔵庫が地下でも安全で、なおかつしっかりと固定されていることだけでなく、ウェインはすべてが基準に従っているようにした。
これはプロジェクトの最後の部分だろうが、これだけを見ると、まるで簡易的な防空壕のようにも見える。だが、ウェインはずっと防空壕を作っていたのだろうか。それとも地下の貯蔵庫には何か別の目的があるのだろうか。
新鮮な空気を
水が土壌をろ過して流れるように排水ポンプを設置するのと同じくらい、換気口を付けるのは重要だ。新鮮な空気なくして、地下にはあまり長い時間いられないだろう。そのため、ウェインは貯蔵庫の前部分と後ろ部分に、直径12インチの換気口を2つ設置した。
これで、ウェインがこの地下貯蔵庫でかなりの時間を過ごそうとしていることが分かるだろう。だが、何の目的で?これは皆さんが予想しているよりも、実際にはもっと実用的なものなのだ。
コンクリートの打設
ここまできたら、もうプロジェクトはほぼ完成しているのではないかと考えたことだろう。だが、ウェインは安全第一だった。地面はわずかではあるが、動くことがある。たとえば、冬に地面が凍結した場合など。そのため、ウェインは貯蔵庫を周りだけでなく、屋根までコンクリートで固めたのだ。
ご覧のとおり、コンクリートの打設も完璧だ。表面は凹凸なく滑らかで、これで完全に庭の一部と化すことだろう。写真から、このプロジェクトのためにどのくらいの庭のスペースを使っているかお分かりだろうが、まもなく工事は完成し、最終的には作った甲斐があったと思えるものになるのだ。
天井のコンクリート厚は6インチ
ウェインが貯蔵庫の上のコンクリート層を薄く作ったと思ったなら、それは大間違いだ。貯蔵庫の上には6インチものコンクリート天井を作ったのだ。これは驚くほど厚みがある。ウェインは貯蔵庫を安全で頑丈なものにしたかったようだ。雨にも、みぞれにも、雪にさえも耐えうるような。
さて、これで何があっても安全なように貯蔵庫が作られた。次は内装プロジェクトだ。
さらに多くのブロックを
コンクリートの養生が済むと、ウェインは基礎に戻り、通路周りの鉄筋にさらに軽量コンクリートブロックを積み上げていった。明らかに、ウェインは通路にこだわり、さらに頑丈にしたいようだった。
貯蔵庫の唯一の外部との接点となるのが通路であるため、より頑丈であればあるほど良いと思われた。扉に至っては、これから数年間もの使用に耐えなければならないため、どんな方法にせよ、悪天候や動物の侵入などを防げるものが良い。さて、ついに外構工事が完成したため、この階段通路をおり、中がどのようになっているのかを見ることができる。
仮の支持梁を取り外す
これまでにも何度も繰り返しているように、こうしたプロジェクトを実行しているときに重要なのは、安全性だ。貯蔵庫を安全で頑丈にするための工程をはしょり、必要な予防策を講じないのは本末転倒だと言える。それに、これだけの時間とお金をかけているときには、手っ取り早い方法をとっても何の良い結果ももたらさない。
そのため、コンクリートを養生した後、ウェインはやっと屋根を支えていた支持梁を取り外した。軽量コンクリートブロックは外観上を良くするためだけのものに見えるが、実際には貯蔵庫の基礎を成していたのだ。
周りに土を敷き詰める
土のくぼみの真ん中に貯蔵庫があるという状態だけは避けたいものだ。そこでウェインは上質な土を運び込み、入り口の周りにその土を敷き詰めた。これはつまり、全ての作業を終えた後に、植物を周りに植えることもできるということだ。植物を植えれば、見た目も裏庭の他の部分とよくなじむことだろう。
この写真からもお分かりのように、プロジェクトの最終形態はそこに大きい穴が開いているようにさえ見えない。これを見ただけで、その地中に貯蔵庫があるなどと考える人もいないだろう。
待って、これはワインセラー?
この貯蔵庫の目的について検討もつかなかったが、この貯蔵庫がワインセラーになるとは予想外だった。しかし考えれば考えるほど、これには合点がいく。ワインやその他の酒(写真にはバーボンウイスキーも見えるようだ)は地下に保管するのが最適だと言う。そして涼しい保管場所に眠らせたワインや酒は、今後何年もその質を保つことができるのだ。
しかし、ウェインがこの貯蔵庫を作った理由はこれだけだろうか。それとも他にこの貯蔵庫を使う大きな目的があるのだろうか。
隠された事実
このように大きなコンテナの良いところは、これが様々な用途に使えるという点だ。この写真からも、まだ何かを保管できるスペースがたくさんあることが分かるだろう。そのため、ウェインが計画していたようにワインを保管することもできれば、その時期以外には使わないクリスマスなど季節ものの飾りや、災害時に備えて保存のきく食料品を保管しておくこともできる。
何か天災が起こったとしよう。ウェインにはこの貯蔵庫があるため、数時間とは言わず、数日でもここに避難することができる。そして、この貯蔵庫の良いところは、なにせ地下に埋められているため、裏庭のスペースをまったく取らないことだ。
設計図や仕様までも惜しげなく公開している
ウェインのプロジェクトの中で最も興味深いのは、少しの費用とリソースさえあれば、誰にでも自分で作れるという点だ。ウェインは自分だけの秘密にせずに、世界中の人々に対し、この貯蔵庫をどうやって作るのかまでの工程をすべて公開している。
ウェインはコンテナの仕様についても公開し、もしこれを自分で作ろうとする人がいるなら何に細心の注意を払わなければならないかについてもメモで記している。さらに、ウェインは自身が実際に作っていく中で学んだ点についても公開している。
改善点
ウェインは自身の貯蔵庫を完成させたが、自身のように自分の力で貯蔵庫を設置したいと考えるかもしれない人々に対して、その注意点やコツについても公開している。ウェインが特に勧めている点の1つは、安全のため、階段に手すりを付けることだ。確かにこれは良い考えだろう。特に寒い地域に住んでいる人には、こうした階段は凍結し、滑りやすくなっているかもしれない。
また、ウェインは入り口の上にひさしを付けるのもいいだろうと述べている。確かにこれもいい考えだ。雪が積もったり、雨水が溜まったりすることを考えると、ひさしがあれば防げるだろう。また、こうすることで、動物の侵入を防ぐこともできるだろう。
こうした考えは何もウェインだけではなかった
現在アメリカ国内で戦争は起きていないものの、多くの人の家には貯蔵室がある。冷戦時代には、政府によって、核避難シェルターや貯蔵室を地下室に作るか、裏庭に埋めて作ることが推奨されていた。
政府は当時、できるかぎり大量のコンクリートを使用し、天井部分を補強するように勧めていた。1960年には、シェルターはうまく設計されていなかったが、現在、人はより多くの情報やリソースにアクセスできる。さて、今日ではどのくらいのアメリカ人が貯蔵室を持っているのだろうか。
貯蔵室施工会社の業績はうなぎ登り
2017年のはじめ頃、コンテナや貯蔵室施工会社の事業は右肩上がりだった。外交で緊張が高まり、将来の不確実性が増えることで、アメリカ人は戦争など不慮の事態に備えなければと考えたのだろう。
テキサス州にある貯蔵室施工会社のライジング・バンカーズのクライド・スコット氏は、2016年~2017年に、事業は過去最高になったと述べている。会社の売上はIndependent誌によれば前年比400%増で、年間1,000万ドルもの利益を上げる企業に成長した。
これはどのくらいかかったのか
結局、ウェインのプロジェクトは高くついたのだが、それでも皆さんが思うよりは安く収まったと言えるだろう。合計で、ウェインはこの自作貯蔵庫に1.25万ドル費やしたのだが、それでもこれはかなり安く作れた方だと言えるだろう。
ウェインはほとんどの作業を自身でやったと述べている。さらに、ウェインはトラクターを所有していることから、穴を掘ったり、土を周りに敷き詰めたりする作業のときには助かったことだろう。これは貯蔵庫を作る上で、必要なリソースがある場合の作り方だが、貯蔵室施工会社に依頼して、作ってもらうのもいいだろう。
上位中流階級は、備えとして
ユタ・シェルターシステム社の社長兼最高経営責任者であるポール・セイフリード氏は、貯蔵室施工事業の業績が近年右肩上がりだと述べている。同氏は世界中の顧客から依頼を受けているものの、主にニューヨークやカリフォルニア、テキサスからの依頼が多いと言う。
セイフリード氏はFox13のインタビューに答えて、「一番小さいシェルターにかかる費用は、5万ドルくらいからでしょうか。弊社が施工したものでも一番大きいシェルターは12(ft) X 50(ft)の大きさで、これだとおよそ10万ドルくらいかかります」と述べている。顧客の多くは家族で使用することを目的として貯蔵庫を施工しているが、こうした貯蔵庫は電磁パルスや放射線を通さない。
サウスダコタのシェルターはリースできる
ビボス・クロスポイントは、サウスダコタ州にある元陸軍基地だ。1967年以降使用されていないが、かつて戦時中に使われた掩体壕(えんたいごう)の再利用計画が持ち上がっている。今回は軍ではなく市民のために。ワイオミング州との州境近くの「電力系統のない」草地には、575基もの掩体壕があるが、これをさらに増やそうという計画だ。
これらの掩体壕は、99年間2.5万ドル、さらに年間1,000ドル追加するとリースして利用できる。広さは1,590平方フィートか2,120平方フィートから選べる。ただ、上下水道、電気、換気の設備はないため、少し手を加える必要はあるだろう。
シェルターにも色々ある
カリフォルニアに拠点を置くアトラス・サバイバル・シェルターは、ドナルド・トランプが大統領に就任したとき、3日間で30基のシェルターが売れたと語っている。2011年から販売を開始し、それまでに10基しか売れていなかった状況と比較すると、人々の関心が高まっていることがお分かりいただけるだろう。
同社がつくるシェルターは、家の快適さを追求したものとなっている。そのため、仕上げ塗装もされていない地下室に避難しているという感覚を味わいたくない場合には、こうしたシェルターを提供している会社を選ぶのもいいだろう。同社の顧客の多くは、ベビーブーム世代だという。彼らは若いときに経験した国際的な緊張による核攻撃やミサイルの脅威を忘れておらず、万が一のために備えたいのだという。