パリの大運河を大掃除!中からとんでもないものが発見
みなさんは、フランスといえば何を思い浮かべるでしょうか?やはりあの有名なエッフェル塔でしょうか?それとも素敵な街並みに囲まれて、カフェでお茶をする優雅な人たちの姿でしょうか?
では、サン・マルタン運河はどうでしょう?もしかしたら名前は聞いたことがあるかもしれません。この記事は、そのサン・マルタン運河で行われた大規模な大掃除の様子を一気にご紹介します。運河の底からは、信じられないものが次々と発見されたのです。
人気映画の舞台となった
フランス語では、カナル・サン・マルタン(Canal Saint-Martin)と呼ばれるこの大きな運河は、地元の人々の散歩ルートでお馴染みのようです。温かい季節になると人々は、運河の近くに腰を下し、おしゃべりに花をさかせたり、ランチを楽しんだりします。
フランスには、様々な観光地がありますが、サン・マルタン運河も人気フランス映画アメリの舞台ともなったとても有名な場所なのです。全長4.55Kmに及ぶこの大運河は、以前は飲料水をひくために使われていたが、現在は完全なるレジャー用の運河として親しまれている。
なくなりかけたことも
実は、この運河は1970年代に一度だけ、埋められそうになったことがある。というのも、当時のフランスでは、人々の行き来が激しくなっており、高速道路が必要となってきたのだった。そのため、4車線の都市高速道路を造るためにふさぐ計画が立てられたのだ。
しかし、この計画はすぐに中止となり、人々の憩いの場所として整備されるようになったのだ。その整備には、今回の記事の主題である大清掃も含まれている。その様子は、実に興味深いものだ。
運河の使用目的は?
そもそもこのサン・マルタン運河が開通したのは、1825年のことだった。ウルク運河から続くラ・ヴィレット貯水池と、セーヌ川へ続くアルスナル港とを結んだのだ。幅が狭かったために、当初はパリに飲料水を導くために開通し使わてれいたが、後にこの場所は、多くの観光客から地元民をも楽しめる、レジャースポットへと変貌したのだった。
運河の一部は地下水路になっており、パリ10区の辺りから運河は地上に出ている。このサン・マルタン運河は、様々な映画の場所として使用されたり、絵画の題材ともなっている。
清掃の始まり
サン・マルタン運河の清掃は、10~15年に1度定期的に行われている儀式である。一回の清掃は、3か月間もの長期に渡り、その清掃方法もかなりきちんとした手順化されており、作業員の多くは、手慣れている。
普段水でいっぱいの、決して底なんて見ることが出来ないこの運河の大清掃は、普段の時以上に人々を興奮させる。そして、もちろんこの清掃の大目玉となっているのが、その数十年の間に、一体運河の底には何が眠っていたのかということである。
水を抜く
運河をきれにするにはまずは水を抜かなければいけません。一気に抜いて、間違っても周辺が水浸しにならないように、丁寧に丁寧に水を抜いていきます。クレーンを使い、大きなコンクリートで周辺を閉鎖します。かなり大がかりな作業です。
この作業には時間もお金もかかります。しかし、パリの素敵な景観を保つためにも、人々の不法投棄を防ぐためにもこの作業は、かなり重要な作業なのです。すべての水を抜く前にお引越しさせなければいけないものがあります。
丁寧に探っていく
全ての水を抜き切る前に、作業員には欠かせない仕事があります。そう、それは、運河の底に眠っている生き物のお引越しです。この運河には、かなり多くの魚が眠っています。そして、この魚一匹一匹を傷付けることがないように、丁寧に模索し、救出させていきます。
写真のように作業員が横一列になり、網を持って魚を囲い込んでいきます。そして、魚を追い込むことで捕まえやすくするのです。魚の中には驚くような大きさの魚もありました。
捕獲された魚は
捕獲された魚は、一匹一匹大きさや、種類を調べ、分別します。この捕獲された魚たちは、市の職員やボランティアの人たちによって、放流場所へと届けられます。
多くの作業員は、ゴム長靴をはきながら、よどんだ水中をゆっくりと長時間歩き、この作業の為に時間を割きます。気の遠くなるような作業だが、生き物を決して無駄にしないというのも、この運河の大掃除の大切なモットーだ。
驚きの大きさ!?
この魚を捕獲し、仕分けする作業は、ものすごい労力と時間がかかります。生き物相手なので、人の手を使って作業しなければなりません。しかし、この大変な作業をする職員たちも珍しい魚や大物が見つかったりすると、束の間ではあるが笑みがこぼれます。
ある年には、重さ16Kgにも及ぶ巨大なコイが発見されたこともあった。その巨大なコイを持って職員がパリの道をかけ巡る様子は、あまりにもパリの景観と不釣り合いでおもしろい。周りの写真家たちも、このような瞬間をとても楽しみにしている。
運河の清掃にはファンも
この運河の清掃は、決して地元民だけの注目イベントではありません。多くの写真家やブロガーが何か面白い発見はないかと、この清掃期間に周辺に集います。中には、この清掃の写真だけを目的にわざわざ海外からやってくる写真家もいるそう。
地元民の中には、小学生や学校の課外授業の為に来ている学生たちもいます。もちろん、毎日のように野次馬たちも、数分から数時間と足を止め、この様子を見学していきます。もはや、何かの催しもののようです。
魚の中には
長時間をかけて捕獲された魚たちは、毎回おおよそ5トンほどにもなるそうです。小さいのから大きいのまで様々ですが、大体は、パーチという名前のスズキのような淡水魚や、コイがほとんどです。中には、珍しいニシキ鯉も多く存在しています。
この5トンもの魚たちは、丁寧に仕分けされた後、運河の下流へと放流されるのです。この魚を仕分けする作業は、決して気持ちのいい作業とはいえません。よどんだ水から救出された魚を長時間触り続けるのは、なかなかキツイ作業です。
電気の棒を使って
魚を探すのは、多くの人数で囲みこんで捕獲しようとしても、なかなかうまくいかないことも多いのが現実です。その場合は、電気の棒など使って、魚を一時的にショック状態に浮かばせます。そうすることで、水を抜く前に魚を捕獲し、環境のいい場所に移すことができるのです。
淡水魚の多くは、泥水に紛れてなかなか目視で確認することができません。だからといって、大がかりな機会を使って捕獲することなどもできない、非常に繊細な忍耐力の問われる仕事です。
いよいよ・・
水の中にいた魚や生き物たちを回収したあと、いよいよ全ての水を抜きゴミたちを回収していきます。はたして、どのようなゴミ(?)たちが回収されたのでしょうか?多くの人が興味深々で見守ります。
多くの砂利や土、泥砂の中にはたくさんの物が眠っています。しかし、回収されたものの中には、警察が出動するような大騒ぎとなった物までありました。果たして、一体その正体とはなんでしょうか?
ただのごみくずに見えても
この写真から見ると、全てがガラクタでゴミのようなものに見えます。しかし、過去にはお宝も眠っていたことがあったとか・・・。この大掃除で見つかるのは、悲しいことに多くの場合、空き缶や瓶、プラスチックのゴミなどの運河には決して捨ててはいけないものばかりです。
しかし、中にはどうしてそんなものが捨てられているの?と疑問を持つようなものさえも見つかることもあります。例えば、普段は家の中にあるこんなものです・・・。持ち物は、どうやって捨てたのでしょうか?
答えは、トイレ
一体、この持ち主はなぜこれをここに捨てようと思ったのでしょうか?むしろ、どうやってここまで持ってきて捨てたのでしょうか?むしろ捨てた後の家には、トイレがないのでしょうか?様々な疑問が重い浮かびます。
粗大ごみの不法投棄は、決して許されることではありません。つまり、このトイレような物品は、決して運河に捨てていいものではないのです。そして、想像してみてください。このどろどろなトイレを拾いあげなければならない作業員の気持ちを・・・
フランスパン?
パン屋でフランスパンを買い、多くの人がそのフランスパンを小脇に抱えて街を歩いている様子は、とても素敵なフランスの日常です。しかし、清掃中のサン・マルタン運河に捨てるのは、いい迷惑です。
このフランスパンを捨てた人物は、このパンの味が気にいらなかったのでしょうか。(フランス人は、フランスパンの味にうるさいと言います。)だからといって、こんな風に捨ててはいけません。卵と牛乳を使って、フレンチトーストにでもすればよかったのに・・・。
サン・マルタン運河の周辺は
サン・マルタン運河の周辺は、小道がたくさん迷路のように入り組んでいます。そのため、観光用のガイドブックには、決して載らないようなこだわりのセレクトショップやリサイクルショップ、チーズ専門店、思わず入りたくなるような素敵なな雑貨屋さんなどが所狭しと建ち並んでいます。
また、おしゃれなカフェやお店がたくさんあるのも有名です。この周辺は、地元の人も特に目的なく、自由にその日の気分で散策するのを楽しむことが多いようです。パリを訪れたら、有名な観光地だけではなく、このような隠れ家的な小道を散策するのも面白いかもしれません。
自転車?
驚くことになんと運河の底には、自転車が投げ捨てられていました。一体、どうやって捨てたというのでしょうか。泥や泥水に汚されてどろどろです。しかし、自転車のような調べれば所有者が分かるようなものは、きちんと調べて元の人のところまで返さなければいけません。
しかし、運河に捨てられていた自転車の多くは、レンタルサイクルやシェアバイクなどのものでした。おそらく、多くの利用者が所定の返却場所に返すことを怠り、この運河に捨てていってしまったのでしょう。
美しい景観の裏には
運河の中からは、本当にたくさんの物が見つかり、その見つかったものは連日ニュースの話題となりました。カラーコーンや、ワイヤー、缶、瓶、椅子など、様々なものが運河から見つかります。
美しい景観を保つために努力をしているフランスでは、景観を汚すような行為は、固く禁じられています。だからこそ、運河に捨てて、一瞬見ただけではわからないように投棄していく人の跡が絶たないのです。
重いものは、取り除くのも大変
水がほとんどなくなった運河からは、立派なバイクも見つけられました。これらは、多くの場合が盗難車であり、身元がつかめません。また、所々にたまった泥水を含んだバイクは、大人の力を使ってもなかなか簡単に動かせるものでもありません。
時には、クレーン車を使って、上から引き上げることもあります。一体、このバイクを捨てた人は、どうやってバイクを持ち上げて捨てたのでしょうか?それほど切羽詰まった状況だったのでしょうか。謎は深まるばかりです。
だんだんと底が見えてきた?
大きな粗大ごみを取り除くと、だんだんと川底が見えてきました。しかし、その底にはこびりついた土や泥がびっしりと敷き詰められてしまっています。また、缶や瓶、プラスチックの弁当ボックスなどは、取り除いても取り除いても、なくなりません。
サン・マルタン運河の周辺では、ランチやコーヒーを楽しむ人がたくさんいます。しかし、そのような人たちが無責任にもゴミを持ち帰らず、川に投げ込んで手ぶらで帰ってしまうのです。そのため、底にはいつまでも分解されることのないプラスチックのゴミが溜まり続けます。
作業員も驚くとあるもの
作業員は、長時間汚く濁った水の中を作業し続けます。魚たち等の生物を傷つけないように、危ないものがないかに細心の注意をを払いながら作業を続けます。時には警察を呼ばなければいけないほど危険なものが見つかることもあります。
ある年には、川の底から拳銃が見つかり、警察が出動しました。その拳銃は、警察が回収し、何事もなく解決しましたが、もし玉が残っていて、間違って踏んでしまって発砲してしまったらなどと考えると、本当に作業員も気が抜けません。
作業全体の流れ
この運河の清掃の全体の流れは、まず船やクルーズの運航を中止、ポンプなどを使って水を抜くところから始まります。そして、魚たちを慎重に移動させます。その後、粗大ごみを取り除き、水門のメンテナンスや川底にたまった土砂を除去していきます。
そして、全ての作業が順調に進めば、約三か月ほどで清掃は終了し、水門の補修などが終了したタイミングで、水で満たされるようにまた水の流れを再開させます。全ての工程が終了し、水が溜まれば運河を走行する船のスケジュールが再開します。
ショッピングカート
運河の掃除中には、ショッピングカートが見つかることも決して珍しくありません。しかし、その理由はいまだにはっきりとしたことがわかっていません。スーパーなどに買い物に行って、ショッピングカートを盗んで、用が終わったからと運河に捨ててしまうのでしょうか?
人々の行動は、時に私たちの想像の範囲を越えてしまいます。ただ、ショッピングカートが見つかるのが、毎年の様に起こることを考えると、悲しいことに決して少数の人だけが起こす行動ではないようです。
サン・マルタン運河のクルーズ船
このサン・マルタン運河を楽しむには、河辺を散歩するのもいいが、実は観光地ならではのクルーズ船も用意されている。このクルーズ船は、セーヌ川やバスティーユの近くから出発し、チュイルリー庭園、ルーブル美術館、ノートルダム大聖堂を通る、正にパリど真ん中の観光コースを満喫することができるのだ。
水門やいくつもの橋を潜り抜けながら進むこのクルーズは、優雅な気持ちでパリの見どころを効率的に楽しむことができる。また、運河の近くに立ち並ぶカラフルなお店は、外観を見るだけでも十分に楽しむことができる。
レンタルサイクルが便利
パリの観光地は、全ての名所を徒歩で回ろうとすると、かなり体力がないときついだろう。しかし、そんな悩みを解決してくれたのが、レンタルサイクルだ。観光客でも気軽に借りることのできるこの自転車レンタルシステムは、2007年から一気に人気が高まった。
24時間年中無休で借りる事のできるこの自転車は、無人で所定の貸し出し・返却口に自分で持っていくシステムだ。しかし、そのシステムの無人なことを逆手にとって問題となるのが、河への不法投棄だ。実際に、レンタル自転車の数は、かなり激減しているという。
マンホール?
もはや、これが何なのか私たちでさえ分からない。丸くワッフルのように格子型をまとったその様子は、マンホールのふたのように見えなくもない。仮にマンホールの蓋だったとして、なぜここに捨てようとしたのだろうか。
そして、マンホールの蓋が開いたままの場所はどこへ?危険はないのだろうか?と次々に気になることが浮かんできてしまう。本当に、水を抜いてみないと何が隠されているかわからないのが、この運河清掃の楽しみでもあり、恐ろしい部分だ。
ワイヤーや謎のコンクリート
空き缶、プラスチック、自転車の次に多く見つかったのが、曲がったワイヤーや、コンクリートの塊です。どうやら、工事現場の人たちが余った資材を、運河に捨ててしまったことが考えられるようです。
そのため、カラーコーンや、鉄パイプなども一緒に見つかっています。サン・マルタン運河は、多くの人が憩いを求めて集う素敵な場所ですが、このような現実を考えると、不法投棄や、粗大ごみの扱い方について今一度考えてみるべきでしょう。
似ても似つかない見た目
水を抜いたサン・マルタン運河は、多くの人が実物を忘れてしまうほど衝撃的な状況です。美しく人が賑わういつもの運河とは一変、河の底は泥水やごみで灰色に映ってしまうのです。
鳥たちもこの状況を悲しむように、集まります。しかし、いつもの美しさを保つために行われるのが、この10年~15年に一回行われる大清掃です。多くの作業員は、この清掃状況を見て、次の10年は、ゴミが投棄されないように市民も考えるようにして欲しいと言います。
夏の夜には
このサン・マルタン運河の夏の夜には、多くの人が集い堤燈を運河に放つイベントが行われることがあります。その景色は、圧巻で美しいパリの街並みをより一層素敵な光と共に照らしてくれます。
この運河は、様々な思いが込められて、今もこうして保存されているわけです。だからこそ、こういった清掃のタイミングを機に、自分たちの行動を振り返ってみて欲しいと地元の作業員は語ります。
また素敵な運河がみられるように
この大清掃には、多くの人と多くの費用、多くの時間がかけられています。それもこれもすべてパリの人たちが、この素敵な運河を美しく保つためです。運河の底から何がみつかるかは、ある意味楽しいかもしれませんが、今後は、何も見つからないような環境が整備されるといいですね。
もし、あなたもフランスを訪れた際は、一度サン・マルタン運河を訪れてみてはいかがでしょうか?きっと、いろいろな思いが浮かぶと思いますよ。