釣り人達が氷山の上で発見した”あるもの”に開いた口が塞がらない
釣り人の毎日は非常に大変だ。朝早く起きて準備をし、疲労と戦いながらも毎日釣りに出かけなければならない。そんなある日、とある3人の釣り仲間が行った日帰り旅行で、信じられない救助活動劇が起きてしまった。ポツンと浮かぶ流氷の上で、彼らが”あるもの”を発見したとき、彼らは目を疑った。しかし、それは一刻を争う事件だったのだ。漁師3人が繰り広げた心温まるストーリーをご紹介しよう。
始まりは船の上から
マロリーとクリフ、アランの3人トリオは、常に一緒に釣りに行くほど大の釣り好きだった。この三人は、あまりにも釣りが好きすぎて、一緒に船を購入し、ついには漁業を始めるほどだった。
3人は、カナダの出身で、海ではどんな種類の魚が釣れて、地元の市場やレストランにはどんな魚が売れるのかもよく把握していた。彼らは、ただ毎日豊漁を夢に見て海に出ていた。そんな彼らは、決して自分たちがこれから海で"とあるもの”に遭遇するなんて思いもしていなかった。
ただのビジネス仲間だけではない
クリフとマロリー、アランの3人トリオは、今までも辛いときには助け合い、常に支え合ってきたビジネスパートナー以上の仲間だった。新たに始めた事業により、この友情が試されることになる事は、場合によっては有り得たかもしれないが、彼らの間にはそんなこと一度も起こらなかった。
3人は海に出て、毎日体のあちこちに新しい傷やあざをつくって帰宅した。それでも決して誰も文句は言わなかったし、この習慣をやめようとも言わなかった。お互いを信頼し合い、次の日また一緒に釣りができることをいつも楽しみにしていたのだ。
運命の朝
3人トリオの人生が一変した日の朝のこと、マロリーは特にワクワクしていた。これからどんな運命が彼らを待ち受けているかなど露知らず、マロリーはなぜか何か良いことが起こるような気がしていて、その日はいつもより早起きをし、誰よりも早く漁に出かける準備を始めていた。
全員が集まるとまず、出航前の確認作業を行った。一度、海に出ると忘れ物は命取りだ。港を出てからまた何かを取りに戻ると、その分の時間が無駄になるからだ。
いざ、出航
船自体の準備は、比較的簡単である。彼らはいつも冗談を交えながら、準備を済ませる。彼らは長年の友達だが、毎朝まるで10年ぶりの再会をしたかのように話が尽きることがない。
「嵐の前の静けさ」だったのだろうか、海はいつも通り穏やかで、カナダ沖に数マイル進んでいたところだった。彼らが熟知しているカナダ沖のカニがよく取れる場所に向かっていたのだ。
カニ網を仕掛ける
目的地に辿り着いた3人は、ボートのエンジンを止め、アイドリングブレーキをかけた。そこは、いつもカゴいっぱいにカニを獲ることのできる最高の穴場だった。彼らはいつも通り、カニ網を海のなかに仕掛け、海底を引きずるように動かした。
この時、既にカニが獲れる時期は終わりに差し掛かっていたが、今年は当たり年だったこともあり、まだ大漁に獲れることを彼らは期待していた。果たして、彼らは過去最高の釣果を記録することができたのだろうか。
最初の豊漁は、何かを伝えるためのサインだった・・
カニ網を海中に仕掛けると同時に、一人がボートの舵を取り、残りの2人は仕掛けのワイヤーが絡まらないように、カゴをうまく調整する。この作業は日課なので、体が自然と覚えていた。
この日、最初のカニ網を引き上げると、そこには信じられないほどの数のカニがいた。彼らは皆、やはりここは最高の穴場であり、過去最高の釣果が今日は期待できると思っていた。全員でハイタッチをしながら大漁に胸を躍らせ、即座にカニを別の場所に移し、カゴを空にして、もう一度カニ網を仕掛けようとしていた。
新たな場所の開拓
その日はかなり好調だった。アランとクリフ、マロリー全員が、これまでのカニ釣りの最高記録を叩き出すかもしれないと思っていた。最初の場所での作業が終わり、エンジンをかけ、更に冷たい海の方へと船を走らせた。
先へ行けばその分、危険度も増す。奥に進むと、氷の上ではアザラシの群れが寝そべっているのが見えた。鳥は一羽も飛んでいない。景色は静かで美しかったが、そこはどこか危険な匂いがした。
氷山がすぐ目の前に!
ラブラドル海は、巨大な流氷がところかまわず流れているため、自動航海機能で釣りをするべき場所ではない。一回の誤った舵操作が命取りになる可能性がある。
アランが辺りの見張り役を行っていた時、遠くの氷山の上に何かいるのを発見した。彼はすぐにクリフとマロリーにその場所を指して教えたが、誰もそれがなんなのかわからなかった。マロリーは、おそらく群れからはぐれたアザラシが、日光浴でもしているのだろうと思った。
アランには日光浴中のアザラシだと思えなかった
クリフはマロリーと同意見だった。これまでも何度か、氷山の上に突然、動物が現れることは珍しいことではなかったからだ。しかしアランは何故、今日そんなことが気にかかっているのだろうか。
アランも、何故気にかかるのか上手く説明することが出来なかったが、氷山の上にいた何かが気になって仕方なかった。アザラシみたいに動き回ってもいなかったし、おそらく違う生物なのではないかと2人に伝えた。2人は望遠鏡を半信半疑で覗きながら、その可能性もあるかもしれないと同意した。
近づいてみることに
3人はカニ漁を続けようと思いながらも、その流氷の上にいる何かが気にかかっていた。そして、その何かから気をそらすことができなかった3人は、やはり近づいてみることにした。
船が近づくと、風は冷たくなってきた。そして、彼らはその何かが、毛のある動物だということが分かった。毛は濡れていて、かわいそうなことに凍えているではないか!彼らは一旦、その動物がなんなのか分かるまで、カニ釣りは中断することにした。
何の動物なのか確かめることに
3人トリオは注意深く船をその氷山に寄せていった。その動物が一体何なのか、分からないまま、これまでに踏み入れたことのない場所まで船を進めていった。自分達は正しいことをしているのだとアランは言い聞かせていた。
クリフとマロリーは、アランほどではなかったが、その動物の正体を突き止めることに賛成した。もし、その動物が危険な状態にいるのであれば、救助しなければならないし、ここまで来てその動物を見過ごし、死に追いやることは出来なかった。
ゆっくりと近づいていくと
船は水の上をゆっくりと進む。2人は船の両サイドに立ち、予想外の危険にさらされてしまわないように注意して辺りを見渡した。流氷が船にぶつかってしまえば、船もろともおしまいだ。そんなことにならないよう、慎重に船を進めなければならなかった。
波も出はじめた。波のせいで船はいつもより揺れている。マロリーは船の両サイドに立っている2人に気をつけるように言った。3人とも自分達がやろうとしていることのために気が高ぶっているのかもしれないが、それでも冷静さを失わないようにしなければならなかった。
突風による荒立つ水面
なんの前触れもなく、突如強い風が吹き荒れたことによって舵取りが厳しくなった。この予想だにしない突風の影響で、氷山も動いていた。果たして、あの動物は無事なのだろうか。
心配なのは氷山の動きだけではなかった。彼らは、氷山の上にいたあの動物が、あまりの恐怖に海に飛び込んでしまうのではないかと恐れた。マロリーは、その動物の行方をじっと凝視し続けた。もし、あともう少し船を寄せることが出来れば、きっとその動物がなんなのか分かる。
流氷の行方を追いかける
氷山を追うことを強いられた今、事態は更に激しさを増した。もはや、動物だけではなく、自分たちも危険にさらされている状況だった。
彼らは氷山に、素早く船を寄せていかなければならなかったが、同時に、周りの海面の状況にも注意を払わなければならなかった。この状況が悪化していく中で、更にもう日が暮れようともしていた。
動物の姿をとらえ始めた
彼らはついにその動物がなにかをとらえるのに、十分な距離まで接近することに成功した。その動物は4本足で、どこか犬のようだった。しかし、こんな場所でペットの犬が飼い主とはぐれることは考えられない。
彼らの予想通り、その可哀想な動物は冷たい海水でびしょ濡れになっていてひどく震えていた。アランとクリフ、マロリーはこの瞬間、たとえ、彼らの命が危険にさらされるとしても、出来る限りのことをこの動物にして、どうにか助けてあげたいと思った。
ついにその動物を特定することに成功した!
しばらくの疑心暗鬼の中、ついに彼らはその動物が何か突き止めた。なんとそれはホッキョクギツネだったのだ!彼らは、そのホッキョクギツネがなぜ氷山の上に取り残されていたのかなんて、考えている暇などなかった。なぜなら、そのホッキョクギツネは既に衰弱していて、それを知っているかのように、鳥たちがホッキョクギツネの上を飛び交い始めていたのだ。
そのキツネは、寒さに凍えているだけでなく、次の食事にありつけるという興奮した鳥たちの前でとても危険な状況にさらされていた。3人は、直ちにこのホッキョクギツネを助けるための行動に出た。
危険な救出劇
彼らに残された時間は少なかったため、そのキツネをどうやって救出するか素早く決断しなければならなかった。時間はない・・しかし、ここにきて彼らは一つの疑問に直面した。
このキツネは果たして、人間のことを信用するだろうか?この野生のホッキョクギツネが今まで、どのくらい人間と接触があったのか調べる余地もない。つまりは、彼らがどんなに助けたくても、場合によっては助けることが出来ない可能性が出てくる。
作戦とは?
クリフとマロリー、そしてアランは、どうにかしてそのキツネを彼らのほうに呼び寄せる必要があった。まず始めに、彼らはそのキツネを怖がらせないように、そっと話しかけながら手を伸ばし、キツネを自分達の船へ呼び寄せることを試みた。
キツネは逃げようとしたが、もちろん氷山の上では遠くに逃げようもなく、ただ彼らを疑うかのようにじっと見つめた。キツネから、彼らのほうに歩み寄ることもなかったが、彼らもまたそこを簡単に立ち去ることもしなかった。
人間とキツネの根比べ
そこからは、キツネと彼らの我慢比べが始まった。キツネは3人トリオに全く興味がない様子だったが、彼らはただじっとキツネが寄って来るのを待つことに決めた。
彼らの忍耐力がまるで試されているかのようだったが、誰も決してあきらめなかった。そしてついに、我慢比べに終止符が打たれることになった。キツネが、そっと船のほうに近づいてきたのだ。彼らのほうに近づくことが、唯一の助かる手段なのかもしれないとそのキツネは悟ったのだろうか。
キツネが船に!
キツネはそっと船に近づいてきた。しかし、船に飛び乗るような体力はないようで、アランが優しく手を添えて船に乗るのを手伝った。アランはできるだけ優しく抱えると船に乗せた。
しかし、これで全てがうまく収まった訳ではなかった。アランとクリフはタオルを掴むと、すぐにキツネの身体を拭き、温めようとしたが、ひどく怯えているキツネをどのように扱うべきか躊躇していた。もし、少しでも扱い方を間違えれば、襲われる可能性もある。そのキツネの彼らへの信頼は、果たしてどれくらい続くものなのだろうか。
脱出を試みるキツネ
キツネはひどく怯え、間違った選択をしたと思ったのか、突如船から飛び降りた。3人は、流氷に戻るために海に飛び込むんだキツネを見て、声を出す間もなくその場に立ちすくんだ。
彼らは、冷たく凍る海を泳ぐキツネの後を追った。そしてアランは、優しくそのキツネを拾い上げ、再び船に乗せた。キツネは、すぐさま船の隅に逃げるように隠れると、まだ怯えているようだった。
最悪の事態は免れた
さすがに2度目になるので、彼らはホッキョクギツネがまた逃げ出さないように注意深く見守った。マロリーが港へと船を進める中、アランとクリフは目を離すことなく、キツネに近づける瞬間を伺った。
もし、このままキツネの身体を温めることができなければ、きっとショック状態に陥ってしまう。キツネに細心の注意を払いながら、彼らは船の中を見回し、何かキツネを温められるもの、安心させるものがないかを探した。
温かくどこか休める場所は・・
マロリーは船を進めながら、2人にキツネに温かい寝床をつくるのはどうかと提案した。クリフとアランは、おがくずしか見つけることは出来なかったが、寝床に敷き詰めるには調度いいのではないかと思った。
おがくずをかき集めながら、彼らは寝床になりそうなプラスチックのケースも見つけた。おそらくこれは、最適なベッドの土台になるだろう!おがくずが断熱材の役割を果たすことを期待しながら、ケースに敷き詰めていった。そして、船の中で一番日当たりの良い場所に置いた。
キツネをベッドに入れる
ここまでキツネの一番の世話をしていたアランは、そっとキツネを抱き抱え、そのケースの中に入れた。すると疲れ果てていたそのキツネは、あっという間に寝入ってしまった。
キツネが体力を温存している間に、なるべく早く港に戻る事ができるよう、3人は先を急いだ。今のところキツネは大丈夫そうなものの、なるべく早く医療処置が必要であることは誰もが確信していた。
つかの間の休息
港まであと30分くらいといったところで、クリフがマロリーに代わって舵を取った。クリフはキツネがあと30分ももたないかもしれないと懸念し、航路を変更したのだ。とその時、船は波にぶつかり、その衝撃でキツネが起きた。
キツネは箱からこちらをじっと見つめてはいるが、まだひどく疲れ、怯えているようだった。マロリーは、キツネを落ち着かせ、また寝かしつけようと何か食べ物を与えようとした。船にあるのはさっき釣ったばかりのカニや魚のみだ。もし、野生のホッキョクギツネが人間から食べ物をもらう事が出来れば、それは奇跡かもしれない。
魚やカニではなく、肉がお好み
プラスチックケースとおがくずが、キツネの身体を温めるのにいい役割を果たし、キツネの身体は乾いていた。マロリーは、魚やカニをあげようとしたが、キツネは興味を示さなかった。何か他にキツネが食べられるものはないだろうか。
マロリーは、自分たちの貯蔵庫に何か食べられそうなものがないか探していると、ウインナーソーセージを見つけた。水に浸して、ボールに入れキツネの目の前に置いてあげると、キツネは興味を示したようで、匂いを嗅ぎ、そして勢いよく食べきってしまった。おそらく、この日、あるいはもっと前から食べておらず、初めてありつけた食事だったのだろう。
港に到着
お腹がいっぱいになったキツネは、再び眠りについたが、それから間もなくして、船は港に到着した。船が港に到着する音でキツネもまた目を覚ましてしまった。マロリーは、そっとキツネに近づき、エンジン音に怯えるキツネを安心させようとした。
マロリーは、優しくキツネに話しかけた。きっと何をいっているのか理解できないとは思うが、声をかけることによって、キツネは落ち着きを取り戻すのではないかと思ったからだ。キツネが慌てて飛び出さないように、岸に完全に辿り着くまで、どうにか落ち着かせておく必要があった。
キツネの住みかを探して
安全に船を岸に着けると、次に3人は、キツネをどうするか決めなければならなかった。キツネの身体は既に温まり、お腹もいっぱいになっているようだ。これから、キツネの住処を探してやらなければならない。
マロリーは、ある一つのアイデアを思いついた。実は、港の近くにキツネを自然界に戻すのにぴったりの場所があることを思い出したのだ。特に危険が潜んでいそうな場所でもなく、キツネが野生にきちんと戻れるかしばらく見守ることもできる。
眺めのいい部屋
新たな住処は、安全に自然界に戻れるだけではなく、犬小屋がありキツネの寝床として使うこともできる!その場所は、港から10分ほど離れた場所に位置していた。
彼らはその場所で早速、犬小屋を探し始めた。崖の側にあるのは覚えていたのだが、確かな場所までは記憶になかった。クリフは、2人が犬小屋を探している間、キツネを大切に抱きかかえていた。
ついにキツネの救助に成功
多少の時間はかかったものの、3人はついにキツネの住処を見つけることができた。今日一日、キツネの為に様々なことをしてきたものの、最後はキツネ自身の判断に出来るだけ任せたいと思い、彼らはキツネの入ったプラスチックケースを犬小屋の側に置き、時を待った。
ホッキョクギツネは、ケースから出て身震いをすると、犬小屋のほうに近づいていった。入口の前に座ると、新しい家をじっと見た。この瞬間、マロリーとクリフ、そしてアランは、自分達が素晴らしいことを成し遂げたと実感した。